「国土行政区画総覧を唯一の典拠とするJIS漢字をインターネッ トで検索する」に挙げたJIS漢字のなか から、現地写真を入手することが出来たものをご覧に入れたいと 思う。
さきの文章では、
と書いておいたが、先ほど http://www.goo.ne.jpで検索したところ、10件のヒットが あった。多くは、新郵便番号の検索システムである。 例えば、Tetsuya Fujii さんの 新郵便番号検索に見える。
また実際に使用された用例としては、広報ふくち平成10年2月号などを検索出来た。
昨年の段階では、まったくヒットせず、がっかりしたものであるが、今回、 広報誌のように誰もが目にする通常の文章の中に使われていることを 確認出来たのはとてもうれしい。
次に、現地写真を掲げてみよう。 これは、北海道大学工学部1年の坂本有生君のレポート「『埖』はこんな ところにあった!」(98年8月31日提出)によるものである。
これはバス停。年輪を感じるし、筆写されてもいて、なかなか味がある。 「埖」の旁の草冠にも注目。
これはご覧のように公園の案内の看板。
坂本君のレポートによれば、
埖渡があるのは青森県三戸郡福地村。僕の実家も この村です。福地村は青森県の南東部に位置し、 八戸市に隣接する人口7千人程の小さな農村です。その福地村の さらに山の中にあるのが埖渡です。近くを通る馬淵川を 臨む河岸段丘に平舘(たいだて)跡があり、 小笠原一族の上野氏が居住していたと伝えられている、 とこれくらいの歴史しかないような所です。
さらに続けて、
この「埖」という字はやはり珍しいのか、1987年発行の村誌では、 半角の「土」と「花」を合わせて表記されていました。 字の由来は残念ながら文献や現地の人に当たってみたのですが、 分かりませんでしたが、現地の有識な人から頂いた説によると、 この辺では、グミの木を表す漢字に「埖」が当てられており、 それがなまって「ごみ」という読み方になったのではないか、 というのがありました。が、「埖」がグミの木を表していた証拠は なく、真相は闇の中です。(略)あと、僕が住んでいる のが椛木という所で、 「椛」はJIS第2水準です。人名にも 使われていて、「椛木」、「椛沢」などという人がいます。 この「椛」は「樺」の略字だそうです。
と、1987年の時点でJIS漢字にあったにもかかわらず、 作字していたことや、 「埖」の字源について興味深い情報を提供してくれた。「埖」に ついて、 菅原義三氏の『国字の字典』(東京堂出版、1990年)を見ると、
一説によれば「渡し」を渡るときに、当初は挨拶して渡ったという ことから、挨渡し(あいわたし)と呼んでいたものを、その後「挨」が 「埃」となり、それが今の「埖」になったというが、 はっきりしたことは分からない。(福地村役場・総務課)
とあって、坂本君のレポートとは違った説を掲載している。 「椛」の地名が近くにあるということだと、なにかそれとの関係が 考えられそうな気もするが、今回は、とりあえず、現地写真をご覧に いれたところで時間切れとなった。