池田証寿編「国土行政区画総覧を唯一の典拠とする漢字をインターネットで検索する」(略称「国土検索」)

1. はじめに

1.1 作成の目的とその経過

このページの目的は、JIS漢字に採用された地名由来の珍しい漢字が、実際にどの程度使われているかを調べようとすることにあります。またそのことを通してJIS漢字の内容を広く知ってもらえればと思いもあります。

いつ頃からこの作業をやったのか、はっきりしないのですが、だいたい、1997年の春頃に始めて、夏休みにはある程度形を整えていたようです。

岡島昭浩@福井大学教育学部さんが、「インターネットで調べる」(『日本語学』16巻12号、明治書院、1997年11月号)でこのページについて言及されています。(これはhttp://kuzan.f-edu.fukui-u.ac.jp/int-kotb.htmでも読めます。)1997年の夏休み前にはWebで公開したかと思います。それ以後、内容に手を加えることが無くなり、しばらく放置しておりました。最初に一通り完成した時点(1997年夏)から一年以上の間、更新していないことになります。そこで、その後、国土行政区画総覧典拠のJIS漢字がどのように使われているのか、検討してみることにしました。これによって、インターネットにおける国土行政区画総覧を典拠にするJIS漢字の使用の推移を観察しようと思うわけです。断続的に更新していく予定です。また、これに関係するいろいろな情報をお持ちしています。特に、現地写真ありましたら、是非とも情報をお寄せ下さい(shikeda@Lit.Let.hokudai.ac.jp)。また、最初の版をそのままご覧になりたい方は、初版をどうぞ。

1998年12月2日から、改訂の作業を開始しましたが、検索すべき漢字が多く、いつ終わるか分かりません。「未検索」「なし」と注記したものについて、検索の協力をいただける方は是非とも検索の結果をご連絡下さい。よろしくお願いします。

1.2 JIS漢字をインターネットで検索することの意義

(これ以下の説明は少し細かいので一般向けではありません。読むのが面倒な方は、「1.3 JIS漢字をインターネットで検索して楽しむ」を一読していただいた後、直接「3.1 インターネットでの検索の方法」か、漢字を一覧した「3.2 部首索引」に行って下さい。)

「国土行政区画総覧」は日本全国の行政地名を大字・小字に至るまで総覧したものです。一般には、あまり知られていませんが、1978年にはじめて制定されたJIS漢字(JIS C 6226-1978 情報交換用漢字符号系、現在はJIS X 0208:1997 7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化漢字集合)では、地名と人名に重点をおいた採用をしており、その地名のソースとなった資料です。

JIS漢字の制定に際して、どのような漢字表を参考にしたかという点については、JIS X 0208:1997の解説(4ページ)に書かれています。JIS漢字は頻度によって選定されたという「神話」は根強くあるようですが、それは誤りです。実際には、次の主要四漢字表に基づいて漢字が選定されたというのが真相です。

インターネットで地名だけに使われる漢字―具体的には「国土行政区画総覧」を典拠とする漢字―を検索することは次のような意義があると考えられます。

  1. 地名の用例をインターネットで確認することによりJIS漢字当初の目的がどの程度達成されているかを検証できる。
  2. 地名として採用したJIS漢字にそれ以外の用法がないかどうかを検証できる。
  3. 一年程度の間隔で定期的に検索することで地名のJIS漢字の増減の様相を検証できる。

第一の点について。地名にしか使われない漢字であっても、これは国民の誰もが使う可能性を持つ漢字であり、それらが実際に使用されていることを実証することで1978年に第一次規格が出されたJIS漢字の当初の目的が正しいものであったことを確認できます。一方、地名に使われる漢字としてJIS漢字に採用したものの、実際にはまったく利用されていないものが多いということであれば、JIS漢字を制定した当初の目的は、現代のインターネット時代にそぐわないものになっているということが言えることになりましょう。

第二の点について。これは、現代日本語における漢字使用の実態調査という観点から 意味が大きいものです。地名由来でJIS漢字に採録されたものでも、実際には、(1)人名で使用されたり、(2)通常の日本語文脈で使われたり、(3)別の漢字を誤って入力したりといった例を拾うことが出来ます。

第三の点について。これは、インターネットを一つの例として情報化の進展具合を測定する目安になるであろうと考えられます。非常に珍しい地名の漢字であっても、次第に使用例が拡大するということがあれば、それは情報化の進展の、具体的な証拠として評価しうると考えます。一方、確実にインターネットで使用されていた地名の漢字が、ある時期から使用されなくなるということも考えられるでしょう。使用例があったことをきちんと記録し、出来れば使用しなくなった理由(行政地名の変更など)も追求しておきたいと考える次第です。

1.3 JIS漢字をインターネットで検索して楽しむ

少々固い話になりましたが、あまり難しく考える必要はないかもしれません。このページでは特に地名(国土行政区画総覧)の漢字の再評価を意図していますが、これを一般化して使用頻度の低い漢字の評価という観点にまとめてみることも可能でしょう。

そのように考えてみると、インターネットで使用頻度の低いJIS漢字を検索することには、例えば、次のような楽しみがあるといえるでしょう。

  1. インターネットでまだ誰も使っていないJIS漢字を探し出す。
  2. 探し出した使用頻度の低いJIS漢字の用法を仔細に検討して、自分の文章中でうまいこと使いこなす。
  3. 探し出した使用頻度の低いJIS漢字をタイトルにした文章を書く。

JIS漢字の6355字を少ないとみるか、多いとみるか、人によりさまざまでしょうが、インターネットではまだまだ手垢のついていないJIS漢字がたくさんあります。それを探し出してどんどん使ってみましょう。他の人とはちょっと違ったことが出来ること、確実です

JIS漢字は少ないとお嘆きの皆様、JIS漢字にあってもまだまだ使われていない漢字はたくさんあります。探して使ってみてはどうですか。


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